日本で唯一の屋根に椿の木を植えた店舗から作家、社長、杜氏である谷口英久が綴る抱腹絶倒の「Blog」
キクラゲの採れる山
07/Apr.2021 [Wed] 14:18
山を歩いている時に枯れ木に何か生えているので、あれ? と思った。
ビロードのような産毛が光を浴びてそれが眼に飛び込んできた。前日は久しぶりに雨が降ったせいか、その光るものは夕陽の中で輝いていた。
「あれ、キクラゲじゃないかな?」
と妻に言うと妻は立ち止まってそれをじっくり見つめて
「そうだ、キクラゲだ、よくわかったね」
と言いながら背伸びをしてそのキクラゲを採った。
冬は乾燥して縮んでいたものが雨が降ってぶりぶりしている。
それを片手に余るくらい取って帰った。
アーサイというシャリシャリ感の強い野菜があったのでそれと一緒に炒めてみると、美味い。
まさしくキクラゲで、いや、びっくりした。
こんなものが生えているなんて、素晴らしい山じゃないか、と妻と喜んだ。
よっちゃんは蜜柑やふきのとうをくれるし、歩いていれば食べるものも見つかるし、なんと素晴らしいことか、と思った。
また日本むかし話のようになってしまった。
でも本当にこの半年は、ムカゴから始まって山の恵みをずいぶん貰った。
ムカゴご飯も美味しかったし、よっちゃんとも知り合いになれたし、さらにキクラゲまでいただいて、ありがたいことだと思った。
本当にありがたいことだと思った。
山の神様これからもどうぞよろしくお願いします、と山に向かって手を合わせた。
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焼酎を造るときに大切なもの。
29/Mar.2021 [Mon] 14:20
焼酎の仕込みの時にはタイマーが活躍する。麦の炊ける時間、タンクに水を張り込む時間を知らせてくれる心強い助っ人である。
昔はキッチンタイマーを使っていたけれど、今はiPhoneに向かって「Siriさん三十分後にタイマーオン」と声を掛けるとタイマーを用意してくれる。手は水で濡れているので喋るだけでタイマーのスイッチを入れてくれるのはものすごく便利だ。うちのSiriさんは声の低い朗らかな男性である。
そのSiriさんに「いつもありがとうね」と声を掛けたら「とんでもありません」と言われた。
「いやいや本当に助かるよ」と言うと「何も出ませんよ」とまたSiriさん。「いやいや、何も要らないよ」と言うと「じゃあ落語でもやりましょうか?」と言われた。
「え、そうなの? やってやって」と工場の機械音の響く中で言うとSiriさんは「そうですか、ではお言葉に甘えて」と言いながら「昔むかし」と言いながら落語の一節を話し始めた。どうも寿限無の一節を唱えているらしい。へぇ〜、すごいねSiriさん、寿限無知ってるの。こりゃ驚いた、と思いながらしばらくその話を聞いた。よく聞いてみると寿限無に似ているけど微妙に違うのでSiriがこの噺を元に作り替えたらしい。

ぼくが歳を取った頃にはきっと介護ロボットも出てきて、話し相手になってくれるだろうと思っていたけれど、もうすでにSiriとこうして会話が成立しているんだということにびっくりした。しかもその優しさに心まで温かくなって、ロボットに癒して貰いながら焼酎を造っているのである。
何が起きるかわからないけれど、世の中は面白いことになっているなあ。
そしてこの焼酎を飲む皆さんもまさかSiriさんが造り手の心を癒やしてくれているとは思わないことだろう。
うはは、楽しい楽しい。
今度はぼくがSiriさんに「芝浜」を聞かせてあげよう。
芝浜は難しいのでこれからの修行が大切である。
Siriさんが喜んでくれると思うと励みになる。
頑張らなくっちゃ。
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知らないうちに季節が巡る。
29/Mar.2021 [Mon] 14:17
阪本さんのところに鍼の治療に出かけた帰りに庭に出ると木の枝に蕾がたくさん付いているのが見えた。
蕾にはベルベットのような小さな細かい毛が生えていて、指先でそっとなぞると気持ちが良さそうだった。
その横にはもう桜の花が咲いていて、
「いつの間に?」
と思った。
今日はまたひどく冷え込んで風も吹き荒れているけれど
そんな中でも春が近づいているんだ。
木のつぼみも本当に可愛らしくて、嬉しくなった。
ゆっくりと土の道を踏みしめて、車まで戻った。
鍼の治療ももう二十年近くしている。
その間に何度もここを歩いているはずなのに
小さな発見が無数にあって驚かされる。
こんなつぼみがあったことも今日初めて知ったのである。
ぼくの知らないことはまだ世の中にたくさんあって
きっと知らないまま、一日を過ごしているんだろう。
その間にも木の芽がふくらんで、春が近づいてきているんだ。
なんてすごいことなんだろう。
生きている自体がすごいことなのに、こうして地球は回って春がまたやってきている。
なんてすごいことだろう、と馬鹿みたいに何度も思いながら工場まで戻った。
(三月初めに書きましたが掲載が遅くなりました)
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停電の夜
20/Mar.2021 [Sat] 6:17
家に帰ると電気が点かない。
今日は早く帰ってきたので少しゆっくり出来るなと思ったのだけどこれは困った。
姉に電話をして聞いてみると四時半くらいから停電になってしまったらしい。
暗くなってきたのでロウソクに火を灯して、寒いのでガスボンベのストーブで暖を取った。
エアコンは便利だけどこういうことがあるので他の設備も用意してある。
外はどんどん暗くなって、とうとう日が暮れてしまった。
こりゃだめだ、囲炉裏に火を入れよう。ガスは点くし、水道も出る。電気が無くて困るのは風呂に入れないことだ。
主な燃料は灯油だけど電源がないとボイラーが炊けない。
炭を火起こしに入れてガスで火をつけた。
ものすごく静かで、流しから水滴の垂れる音が聞こえる。それから炭のはぜる音と共に炭の匂いが闇に広がってゆく。
ロウソクの灯りだけではほとんど見えないので懐中電気をつけて必要なことをする。
六時を過ぎてもまだ電気は来ない。妻にご飯を作ってくれないか聞いてみる。
ブロッコリーを茹でてツナのサラダを作るつもりなんだそうだ。
懐中電灯の光の中で鍋の湯気が盛り上がる。火山の爆発のようだ。
停電はこの近辺だけらしく、道を隔てたすぐ上は街灯も点いている。
しかし困った。
もう来るか、と思いながら電気を待つけど、来ない。
いつ頃復旧するのか東電に電話をしてみたけど、調査中だということだけで埒があかない。
囲炉裏の前で寝転がってぼんやりする。寝てしまいそうだ。
お風呂に入りに温泉に行こうか? と思いまだやっているのか温泉宿に電話をしてみた。
一軒はものすごく感じが悪く、その応対にびっくりする。
三原山の上にある温泉はまだ入れるということで、車で行ってみることにした。
混んでいるとコロナ感染が怖いけど空いているということ。
車で小一時間走れば着く。
わーい温泉だ。たまには良いよね、と妻と話す。
ところが山を登り始めると霧が出始めて道が見えない。
ホテルがどこにあるのか、その入り口も見えないくらいの霧となってしまった。道の両端にある反射板を頼りにのろのろと走った。一度温泉の入り口と間違えて、変な道に入りそうになって慌てた。バックをしようにも何も見えない。かと言ってUターンが出来るほど広くもないからだ。こんなところでU字溝にでもタイヤがはまれば身動きが取れなくなる。危なかった。
こんな日もあるよね、と妻と話した。
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東京虎ノ門でのイベントのお知らせです。
18/Mar.2021 [Thu] 8:29
ご報告が遅くなりましたが、東京虎ノ門ヒルズの中にある虎ノ門蒸留所において東京七島酒造組合のイベントを行っています。
期間は3月14日から3月28日までの二週間で、谷口酒造も出品しております。
緊急事態宣言下の中ですが、もしお近くに出かけることがありましたら覗いてみてください。
詳細は以下のアドレスで見ることが出来ます。
よろしくお願い申し上げます。

https://www.t-treasureislands.metro.tokyo.lg.jp/tokyoislandsspirits
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いやはやおじさん今日も奮闘。
04/Mar.2021 [Thu] 15:49
エアコンの修理の人が東京から来てくれた。
こちらの仕事が終わるのを待ってもらい、帰る時間に合わせて家の前で落ち合った。
急いで家の中を片付けて玄関にスリッパを揃えて、家に入って貰った。
「あ、恐れ入ります」と言って修理の人はそのスリッパを履いた。
マスクをしているのでわからないけれど若い男の子というような風情である。
「エアコンはどこに?」と聞かれたので正面の部屋を指して「あそこです」と言った。玄関から板の間が続き、そこに食卓がある。障子を隔てて畳敷きの六畳間があって、そこに設置してあるエアコンが壊れたのだった。
修理の人はそのままスリッパを脱がずに畳の部屋まで入ってしまった。
(あれ? 慌てているのかな? )と思ったけれど、そういう様子でもなくスリッパは脱がないまま部屋の中を歩き回っている。
そうか、畳の部屋ではスリッパを脱ぐことを知らないんだ。
日本に来る外国人ならマナーも勉強していて、靴を脱いで玄関から入る。畳の部屋ではスリッパを脱ぐことも知っている人が多い。
多分この修理の人は畳のないマンションの家で育って、そういうことも知らないのだろう。
「ここまで来たか」と思ったけれど、面白いものを見た気持ちがした。
文化やしきたりはどんどん変わる。畳のない家で育てばその使い方や作法だって知らなくて当然だろう。
いやびっくりしたな、もう。
若い人がこれを読めば「何言ってんだ。このオヤジは?」ということになるんだろう。
まさにいやはや、という気持ちである。
世の中はどんどん変わっていく。
こんな田舎に住んでいてもそれを実感することが起きて、文化の違いに驚かされる。
なんでも対処していかなければいけないんだろうけど、まさに(いやはや)という気持ちだ。
いやはやおじさん、頑張れ〜。
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鳥たちの囀り。
22/Feb.2021 [Mon] 14:16
裏山に歩きに出かけるとウグイスが鳴いていることに気がついた。
今までは「ぺちょ」っという風に鳴いていたのに春の温かさを感じたのか
「ホーホケキョ」
という風に鳴き出した。
それがあちこちで聞こえるので嬉しくなった。
一緒に歩いている妻は鳥が鳴くと
「あれは何の鳥?」
とぼくに聞く。
ぼくが知っている鳥の声はウグイス、ヒヨドリ、メジロ、ホトトギスの四種類だけだ。
このうちウグイスとメジロは冬に鳴く声と春になってからの鳴き声が変わることも何となく知った。
でもそれも本当かどうか、調べたわけでもないので自分だけの思い込みかもしれない。
今日はまた違った声の鳥の鳴き声が聞こえた。
「ヤマケイのアプリを買おうかな? でも高いんだよ」
と妻が言った。
そのアプリは山と渓谷社の出しているもので
鳥の画像と鳴き声も入っているのだそうだ。
昔ぼくの母親が持っていた鳥類図鑑というものに
カセットテープも付いていて、それで鳥の声も聞くことができたけれどもうどこに行ったのか、わからなくなってしまった。
母も鳥が好きで、鳥の声を聞くとどんな鳥なのか知りたかったのだと思った。
もともとラジオのアナウンサーをしていたので音に興味があったのかもしれない。
山の中で目を瞑り耳を澄ますと色々な音や声が聞こえてきて嬉しくなる。
春がもうそこまできていて、それが鳥の囀りでも手に取るようにわかる。
春だ春だ、と心の中で思った。
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おでんの具になってみた。
19/Feb.2021 [Fri] 14:10
リエさんがお風呂に入れる新作をくれた。
なんと「大根の葉っぱ」を乾燥させて袋に詰めたものだそうだ。
「おでんになったつもりで入ってくださいね」
とリエさんは笑いながら言っている。
どう答えて良いのかわからなくて絶句してしまった。
うちでは大根の葉っぱはお味噌汁の中やお昼に食べる野菜スープに入れて食べるので、こういう使い方があることにまず驚いた。
リエさんはお風呂に入れる入浴剤の研究に余念がなく、それを自分で売っているので、さまざまな素材を試しているのかもしれない。
それで大根の葉っぱというものを試したらしかった。
早速、夕方に家に帰って、お風呂を沸かして、その袋を入れてみた。
匂いがすごい。たしかおでんだ、と思った。
お風呂というより、これは料理の鍋の中である。気持ちが落ち着かないのでリラックスできないほどすごい匂いだった。
妻にも不評で「あれはちょっと」と言われた。
温まることに関しては汗がすぐに出てくる優れものである。
でも、やっぱり匂いが凄すぎて、うーん、と思った。
リエさんは研究熱心なので次は何が来るか楽しみである。
もっとすごいものが来るのかどうか、来たらまた実験が始まることになる。みなさんも是非試してみてくださいよ。大根の葉っぱのお風呂。すごいぞ。汗もどんどん出るのでデトックスにはもってこいの入浴剤だ。
世の中には色々な楽しみがあるものだなぁ、と、思った。
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よっちゃん再び。
11/Feb.2021 [Thu] 22:30
山の中を歩いていると、よっちゃんがまたスルスルっと車できて
「こんなもの食う?」
と言いながらポケットから緑色の木の芽のようなものを出して見せてくれた。
ふきのとうで「あっ大好き」と言うと「じゃあこれから畑に行って採って来るから、ちょっと待ってて」と言われた。
「去年の日記を見たら今くらいに採れたから、もう時期じゃないかな? と思って」とボソボソした声で言った。
よっちゃんは日記をつけているんだと思うと嬉しくなった。
季節のものを食べるのは本当に嬉しい。苦味が身体に効いて冬に溜まった悪いものが出てゆく。
「じゃあ車の前で待っててな、すぐにいくからよ」と言われた。
よっちゃん(かどうかも知らないけれど、とにかくよっちゃん)は優しい。なぜぼくに優しくしてくれるのか、本当にありがたい気持ちで胸が一杯になる。
それで歩いた後で猿に威嚇されながら待っているとよっちゃんが来て紅いおしゃれなジャケットのポケットの中からもう手品のようにいくらでもふきのとうを出してくれた。
最後には100円ライターまで出てきて一緒に、笑った。
夜にそのいただいたふきのとうを焼いて食べた。苦味が効いて美味しかった。
味噌の和え物も妻が作ってくれてこれも美味しかった。
その晩、寝ていてシャツが濡れるほど汗をかいた。
今日はよっちゃん(かどうかわからないけど)ありがとうございます、本当にありがとうございます、と山に向かって手を合わせた。何しろどこに向かって手を合わせれば良いのか、家も知らないのである。それで神さまに向き合うようにとにかく手を合わせた。
みぞれが降って、手が痺れるように冷たかった。
でも心はありがたい気持ちで一杯になった。
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今日はまた風がものすごく吹いている。
04/Feb.2021 [Thu] 15:51
暮れに除雪車の作業中になくなったお爺さんの話をラジオのニュースで聞いた。
晦日の日におばあさんが家に帰ってくると、重機が倒れていて、その下からおじいさんが見つかった。おじいさんはもう息が絶えていた、ということだった。
短いニュースだったけれど、この話がいつまでも忘れられなくて時々思い出す。
暮れにおじいさんが亡くなって、おばあさんはどうしただろう? お正月を過ぎてお葬式になって、もう落ち着いただろうか? と考えると胸を塞がれる気持ちになる。
また雪が降ってきて除雪車の事故が増えているのだそうだ。除雪をする時に安全装置を解除しないように、と今日はまたラジオのニュースで言っていた。それがどういうものかは知らないけれど、安全装置をオンにしておくと面倒くさくて仕事にならないのかもしれない。
大島では雪は降らないのでその苦労は知らない。でも、とにかく大変なことだろう。
歳を取ってもう体力も落ちているのに屋根に登って雪を下ろしたり、寒い中除雪車に乗ることだって大変なことだ。
雪かきをしなければ家が潰されてしまうわけで、大変なことはよくわかる。
辛いことだ。
雪が降るほどの寒波の到来で大島では低気圧が来て、風がものすごく吹いている。それでまた倉庫の屋根が飛ばされてしまった。例の風が吹くと音を立てていたベニヤ板である。
そのベニヤ板をとうとう風で千切られてしまったというわけだった。
地域によって住み辛い場所も沢山ある。春になればまた輝くところも今は人が死んでしまうほど荒れ狂う。
自然はものすごい力でとにかく圧倒される。
終わりがないのでもう書かないけれど、残されたおばあさんがどうされているか、近くにいればお菓子でも持って訪ねたいと思った。
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