日本で唯一の屋根に椿の木を植えた店舗から作家、社長、杜氏である谷口英久が綴る抱腹絶倒の「Blog」 |
誰だろう? と思いながら
「はい。そうですが・・・」 と答えた。 「スズメ蜂の巣を取りに来ダンだけどナ」 とおじさんは言いながら、車を降りた。 専門の業者というよりは、土建屋さんが 兼業でこの仕事を引き受けているらしかった。 おじさんは目頭に目やにをいっぱい溜めた目をショボショボさせて、 トラックの荷台に積んであった白い服を引きずるように降ろすと、 それを身に付け始めた。 comments (1) : trackback (x) : PAGE UP↑↑↑
それなら、しばらく待って、六時以降にしたほうが良いのかもしれない。
まあ、どっちにしても仕事は出来そうにない。 蔵の扉を締め切って焼酎を瓶詰め用のタンクに移せば良いのかもしれないけれど、 こんなに暑くてはそれも出来そうにないことがやってみてわかった。 仕方がないので事務の仕事をすることにした。 手紙や書類や、そういうものも山積みになっている。 しかし細かい字に目を落とすと、 ピントがうまく合わず、すぐに嫌になってしまった。 四時五分前になって、土建屋の軽トラックが蔵に入ってきた。 おじさんが一人出てきて、東北弁で 「タニグチシュゾウさんは、コゴかね?」 と言った。 comments (2) : trackback (x) : PAGE UP↑↑↑
返事はすぐに来て、午後四時頃、こっちに来るという。
しかしそのあいだ、仕事をすることができない。 なんとか早くに退治は出来ないものか、と思った。 阪本さんに電話をして聞いてみると、 蜂は昼間のあいだは外に出ているので、 本当は夕方、日が暮れるのを待ってから退治したほうが良いという。 そうしないと、巣に戻ってきた蜂が再び巣を作る可能性があるのだそうだ。 そうか、そういうこともあるのか。 comments (4) : trackback (x) : PAGE UP↑↑↑
「役場に電話をすれば、
生活環境課から人が来て退治してくれますよ」 木村君は言った。 そう言っているあいだにも、 巣の入り口からスズメ蜂が外に這い出しては飛んでいった。 役場の生活環境課に電話をしてみた。 生活環境課の職員が蜂の巣を退治するのではなく 専門の業者に連絡を取ってから、 もう一度連絡をくれるシステムになっていることがわかった。 一回、五千円掛かるという。 高いといえば高いような気もする。 でも安いと思えば、そんな気もする絶妙な値段の設定だった。 comments (3) : trackback (x) : PAGE UP↑↑↑
「やめなよ。今度刺されたら死んじゃうんだよ」
妻がぼくと木村君が話しているのを聞いて、 事務所の中から大きな声を出すとそう言った。 「そうだね、怖いからやめたほうが良いよね。木村君、やってよ」 ぼくは言った。 「無理ですよ、今、配達の途中だもん」 木村君は口を尖らせるようにしてそう言った。 「刺されたら死んじゃうんだよ」 ぼくは言った。 comments (2) : trackback (x) : PAGE UP↑↑↑
「どうするの?」ぼくは言った。
「紙を丸めて、巣の入り口に突っ込むんですよ。 それから殺虫剤を巣の中に入れて噴霧してやれば、みんな死にます」 木村君はなんでもないことのようにそう言った。 しかし昨日、ペットボトルの中で死んでゆくスズメ蜂に凝視されて どんなに怖かったか、と思い返した。 comments (3) : trackback (x) : PAGE UP↑↑↑
「今まで気が付かなかったんですか?」
木村君は眼鏡をずり上げるようにしながら言った。 「うん。わからなかった」 ぼくは言った。 巣は少し奥まった場所に作られていることもあって、 まるで気がつかなかった。 けれども、巣があることがわかったら、急に怖くな ってきた。 今までよくこの下を歩いていたものだ、と思った。 「今はまだ良いですけど、もう少し涼しくなると スズメ蜂たちも動きが活発になってきますから、 早めに退治したほうが良いですよ」 木村君は灯油をポリタンクに入れて、 それをやじろべえのように運びながらそう言った。 comments (3) : trackback (x) : PAGE UP↑↑↑
そうだ、穴の底辺の部分は切らずに、
それを折り返しておけば良いのではないだろうか? 夢中になってそれを作っているうちに、日が傾いてきた。 やれやれ、今日も一日が終わってしまった。 翌日の朝、灯油を入れにきた木村君が、 蔵の軒下にスズメ蜂の巣があると教えてくれた。 木村君はガソリンスタンドで働いていて、 週に何回かうちの灯油タンクに給油をしに寄ってくれる。 「えーっ?」と思って、木村君についてゆくと本当にスズメ蜂の巣があった。 子供の頭よりはるかに大きなものだった。
続いて二匹目の蜂がやってきた。
どうもさっきの蜂が液体の中で羽ばたく 鈍い音を聞きつけてやってきたように思えた。 二匹目からは群れとは言えないまでも、 もうどんどん飛んでくるようになった。 ペットボトルの中はすぐにスズメ蜂でいっぱいになってしまった。 液体をもう一度作って、新しいボトルを作らなければ間に合わない。 今度は表面がツルツルのペットボトルを探してこなければ、 うまくいかないだろう。 ついでに、スズメ蜂がよじ登ってきても、 外に出られないように忍び返しを付ければもっと良いように思った。 そうするにはどうしたら良いんだろう? comments (3) : trackback (x) : PAGE UP↑↑↑
蜂は上まで登ると穴から出て再び外に出ようとした。
出る前に液体の中に再び落とそうとして、ボトルを揺すった。 蜂はまた下に滑り落ちた。 溺れるまで何度も何度もボトルを揺すった。 液体の中から、蜂がこっちを凝視している。 牙が大きい。 目も大きい。 死ぬ前にこんなに見つめられたら、あ とでどんな仕返しをされるか、と本能が怖がった。 触覚を細かく震わせるようにしてスズメ蜂は動かなくなった。 comments (2) : trackback (x) : PAGE UP↑↑↑
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・土建屋さんとスズメバチの関係 925
→2/06 ・事務仕事もやらんかね 924 →2/05 ・仕事帰りの蜂に襲われることもあるからね 923 →2/02 ・絶妙な値段がこの世にはある 922 →1/31 ・死んじゃうんだよ って言われても 921 →1/29 |
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