日本で唯一の屋根に椿の木を植えた店舗から作家、社長、杜氏である谷口英久が綴る抱腹絶倒の「Blog」
カンモンからのメール
24/Jun.2021 [Thu] 14:47
ミャンマーの友人、カンモンにメールを送ってみた。
今まではその送ったメールをミャンマー政府に検閲されて、もしカンモンの身に何かあったらと思いメールを控えていた。
けれども日に日に情勢は悪くなり、デモに参加して殺されてしまう人が増えてゆくので、たまらずメールをしてみた、というわけである。
するとすぐに返事が来た。
家族も自分も無事なこと、でも親戚がデモに参加して殺されてしまったことが書かれていた。
とにかく政府の間違った行動には徹底的に反対する、と書いてあった。
無事で良かったと胸を撫でおろした。けれどもこれからどうなるのか、まだ誰にもわからないというのが実情だろう。
実質、国としての機能が止まってしまっている今、国民がどうやって食べてゆくのか、そんなことを考えると頭がクラクラしてくる。
とにかく無事でよかった、と妻と胸を撫でおろした。
それと同時にミャンマーのサッカー代表の選手の一人が日本からミャンマーに帰ることを拒否しているニュースが入って来た。
公式の場で三本指を立ててミャンマー政府を批判したので、帰ればすぐに拘束されてしまうからだ。
アウンサンスーチー氏の裁判も長く続いていて、これからどうなるのか、ぼくが心配しても仕方ないけれど、それでも無事に解放されることを祈っている。
とにかくカンモンが無事で良かった。また近く会えたら良いけれど、いつになるか、その日を心待ちにしている。
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平和ということ。
22/Apr.2021 [Thu] 22:37
この五年の間、ミャンマーに何度か出かけた。ミャンマーの多くの地域が旅行者に開放されたことで比較的自由に旅ができるようになったからだ。
何度か出かけるうちに少しずつ知り合いも出来て、インレイ湖という湖のほとりにある街で友達ができた。
いつも泊まるホテルのフロントで働いている女の子で英語が話せるカンモンという子だった。
いつも唇を噛み締めるようにして働いていて、その顔を見ると手を合わせたくなる。
真摯で真剣な様子が見ているこちらにも伝わってきて、我々夫婦はカンモンのファンになった。
ホテルといっても安普請で何年かするうちに近所には立派なホテルが立ち並ぶようになった。値段も大して変わらないので綺麗なホテルに泊まれば良いのだけれど、カンモンがいるので、我々は頑なにそのホテルに泊まった。停電やらお湯が出ないこともしょっちゅうあるけれど、カンモンの顔を見ると仏さまのお顔を拝むような気持ちにいつもさせられた。
四度目に出かけた時に「うちに遊びに来てください」と言われて、カンモンが休みの日に彼女の家まで出かけた。
親戚が三軒同じ敷地内にそれぞれ家を建てて住んでいるという。
遊びに行くとその親戚の人たちがみんな出てきて大歓迎を受けた。
カンモンは五人兄弟の末っ子で家ではご両親に可愛がられて暮らしている様子が見てとれた。カンモンではなく「モン」と呼ばれていて、その呼びかたにも愛らしいものを感じた。
すべてが自給自足で畑で採れる花を市場で売ってお金を得ているらしい。
家の中は必要なものしかなく、質素だけれど美しい生活だと思った。
お母さんはぼくと同い年で、そうか自分にも子供がいればモンは娘くらいの年齢になるのか、と思った。家族の写真を撮って、それを次に出かけた時に額に入れてプレゼントするとお母さんは大そう喜んでくれた。自分や家族の写真を見るのは生まれて初めてのことなんだとモンが教えてくれた。
翌日、モンは一日ホテルの休みを取って、我々夫婦と共にボートに乗って遠くのお寺まで出かけた。
初めて会ってからもう四年も経ったんだね、とモンと話した。
ホテルを出る日の朝には、働いている人たち全員が集まってくれて、見送りを受けた。
モンは休みだったのにもかかわらず、ホテルの外で待っていてくれて、みんなで一緒に記念撮影をした。
迎えに来たタクシーに乗って窓の外を見ると、モンが一人でホテルの前に佇んで泣いているのが見えた。降りていってもう一度挨拶をしたかったけれど、タクシーは動きはじめて、車の中からからモンに手を振った。
今、ミャンマーは大変なことになって、あの静かな人たちが軍に向かって抗議のデモをしているという。モンもそのデモに参加しているだろうか、軍に発砲されて死者も多く出ていて、そのニュースを見ると心が痛む。
あの時、タクシーから降りてモンにもう一度挨拶をしておけば良かったと後悔している。
どうかまた平和な時が訪れて、みんなに会いたいものだと心から願っている。
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今日はまた風がものすごく吹いている。
04/Feb.2021 [Thu] 15:51
暮れに除雪車の作業中になくなったお爺さんの話をラジオのニュースで聞いた。
晦日の日におばあさんが家に帰ってくると、重機が倒れていて、その下からおじいさんが見つかった。おじいさんはもう息が絶えていた、ということだった。
短いニュースだったけれど、この話がいつまでも忘れられなくて時々思い出す。
暮れにおじいさんが亡くなって、おばあさんはどうしただろう? お正月を過ぎてお葬式になって、もう落ち着いただろうか? と考えると胸を塞がれる気持ちになる。
また雪が降ってきて除雪車の事故が増えているのだそうだ。除雪をする時に安全装置を解除しないように、と今日はまたラジオのニュースで言っていた。それがどういうものかは知らないけれど、安全装置をオンにしておくと面倒くさくて仕事にならないのかもしれない。
大島では雪は降らないのでその苦労は知らない。でも、とにかく大変なことだろう。
歳を取ってもう体力も落ちているのに屋根に登って雪を下ろしたり、寒い中除雪車に乗ることだって大変なことだ。
雪かきをしなければ家が潰されてしまうわけで、大変なことはよくわかる。
辛いことだ。
雪が降るほどの寒波の到来で大島では低気圧が来て、風がものすごく吹いている。それでまた倉庫の屋根が飛ばされてしまった。例の風が吹くと音を立てていたベニヤ板である。
そのベニヤ板をとうとう風で千切られてしまったというわけだった。
地域によって住み辛い場所も沢山ある。春になればまた輝くところも今は人が死んでしまうほど荒れ狂う。
自然はものすごい力でとにかく圧倒される。
終わりがないのでもう書かないけれど、残されたおばあさんがどうされているか、近くにいればお菓子でも持って訪ねたいと思った。
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ボクシングの選手のようにゆらゆらと。
16/Oct.2020 [Fri] 14:50
仕事場の台所から、窓の外を見ていた。
窓の網戸にカマキリが一匹とまって
ゆらゆらと揺れているのが見える。
何かを狙っているのかな? と思って
目を凝らすと、ハトムシがその先にいるのが見えた。
そうか、あれを狙っているんだ。
カマキリは自分の鎌を折り曲げて
ボクシングの選手のようにゆらゆらを繰り返している。
そんなに動いたら、獲物が逃げてしまうんじゃないか?
と思うけれど、そうでもないらしい。
少しずつジリジリとハトムシに近づいている。
突然、カマキリは鎌を広げて、ハトムシに襲いかかった。
その瞬間、ハトムシは逃げてしまった。
ああ、残念だったねえ。
もう少しで捕まえられるところだったのに。
自分も暇だと思うけれど、こういう虫たちの
攻防戦を見ているのは飽きることがない。
ハトムシの勘の良さにも驚いた。
まあ囚われてしまえばそれっきりとなってしまう。
すごいもんだなあ、と拍手を送りたくなった。
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峠の我が家に辿り着く。
12/Sep.2020 [Sat] 13:17
「ずいぶん良くなったねえ」
と妻に言われた。
妻はしみじみとした柔らかい表情になった。
大切に育てている植物が元気になった時に見せる
嬉しそうな誇らしいような表情に似ていた。
めまいと吐き気が一番酷かった頃は
生気が無くなって、
本当に死んでしまうかと思ったほどだという。
鍼を打ってくれる阪本さんも
「あの頃は目に力が無くなっていた」
と言われた。
確かに危なかったなあ、と自分でも思う。
あんなに具合が悪くなったのは
今までの人生の中でも無かったことのように思った。
お腹が痛くなって手術をしたこともあるけれど
それでも医者に行けば理由がわかるので
不安になることはなかった。
けれども今回はどこに行ってもその原因がわからず
それが一番辛かった。
食べられないことでどんどん痩せてゆくのも
本当に困った。
足に力が入らないし、体が枯れ木のように細くなってゆくのである。
体重は今でも痩せた時のままだけれど
近頃は筋肉がついてきたように思う。
これではいけないと思って毎日歩きに出かけたことが
良かったのかもしれない。
もう峠は越したのだろう。
いやはや、人生何が起きるか、わからない。
具合が悪くなっても原因がわからないことだってあるのである。
そんな時にどうすればいいか?
と思っても、泥沼にはまったように身動きが取れない
状態になっていることもある。
それに気がついただけでも儲けものだった。
吐き気とめまいもまだ続いているけれど
なんとか凌げるようになってきた。
健康は本当に大事だなあ、と歳を取って
ようやく実感しているというわけである。
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洞察力を養う。
10/Sep.2020 [Thu] 15:01
歯医者さんに出掛けた。
左上の歯が疼いて、浮いたような感覚を覚えるからだった。
「家の方はどうです? 修理できましたか?」
と先生は言った。
「いえ。大工さんは手が足りないし
とりあえずの応急措置だけでまた台風が迫っています」
そう言うと先生は
「そうですね。まだブルーシートを張ったままの家がたくさん
あるもんね」
と言った。
「タニグチさんは大きなストレスを抱えて、
歯を食いしばっているから
それで歯が痛んでいるんだ。
その結果が今、この浮いた歯に出てきているんだ」
と先生は助手を務める女医さんに言った。
確かにその通りである。
台風の修理に屋根に登っているうちに
肩が凝り、胃が傷んだのだろう。
自分が思っているよりずっと、大きなストレスを
背負っているのかもしれない。
何気ない会話から先生は原因を引き出しているわけで
(すごいなあ)
と感心してしまった。
先生はもう白髪で、けれども治療の時の集中力はすごいものがある。
こういうお医者さんはもう少なくなってしまった。
会話の中から、その人が病んでいる原因と背景を
引き出してくるのである。
診察室でお医者さんの前に座っても
患者の顔も見ない人もいるけれど
この先生は何気ない会話から
歯の痛む原因を探り当てているのである。
良い先生と巡り合えて良かったと
心の底から思っている。
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おーい、元気か?
06/Sep.2020 [Sun] 14:49
毎日、裏山に歩きに出かける。
その時に、藪の中から「にゃあ」という声が聞こえて
きて、何だろう?と思った。
猫じゃないの? と妻が言うけれど
姿が見えない。
こんなところで猫が? と思うけれど
確かに猫の声である。
翌日になるとその声はもっと近づいてきた。
「おーい」
と声をかけると、にゃあという声は激しくなって
沢の下の方からどんどん近づいてくる。
小さな猫だった。
生まれて間もない猫が段ボールの箱に入れられて
捨てられたらしかった。
猫は沢を登って、排水溝の中にいる。
そこは金網が張られているので、こちらからは手が届かない。
「こっちにおいで」
と声を掛けるとちゃんと来た。
金網が途切れる場所までトコトコと歩いて来た。
生まれて間もない本当に小さな猫だった。
何か食べるものを持ってこないとこのままでは死んでしまうだろう。
それで工場に戻って、牛乳に鰹節の粉を混ぜたものを
持っていってみた。
入れ物はどうしようか? と妻と話して
お灸が入っていたプラスチックの容器を使うことにした。
持っていってみると、子猫は最初は警戒していたものの
すぐにこれを飲んだ。
良かった。これでとりあえず死ぬことはないだろう。
翌日は東京の病院に検査に行くことになっていたので
どうしようか、迷ったものの、船に乗る前に
やはり牛乳を持って出かけてみた。
昨日の牛乳が残っていたのでそれを捨てて
新しいものに替えた。
病院の検査は二日掛かって、三日目になって帰ってきた。
帰ってきてすぐ猫のいる裏山に行ってみたけれど
猫の姿は見えなかった。
あたりをずいぶん探してみたけれど、どこにも見つからなかった。
山の中なので、人もあまり歩かない場所である。
どこかで元気に暮らしているといいね、と妻と話した。
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すごいスピードで変化している。
09/Jul.2020 [Thu] 15:03
熊本の洪水に続いて
今日は岐阜でも大雨の警報が出た。
大変なことである。
球磨川の氾濫のニュースをラジオで聞いている時に
「可能な方は屋根に登ることをお勧めします」
とニュースでは言っていた。
しかし現実的に考えて、洪水が起きた時
咄嗟に屋根に登ることのできる人は
どのくらいいるんだろうか?
と思った。
状況として、洪水が起きているのであれば
もう家のまわりは水が溢れてきているだろう。
そんな状況で屋根に登るためには、ハシゴが必要になってくる。
ハシゴを架けるためには、外に出なければいけないわけで
そうなるともう水に流されてしまうこともあるだろう。
二階にベランダがあって、そこからハシゴで
屋根の上に上がれる、というのなら可能かもしれない。
つまり、ふだんから、そういうことを想定して
屋根に登れるようにしておかなければ、
いざという時に助からないかもしれないよ、ということだと思った。
そのくらい、地球の環境が変わってきているんだろう。
ぼくの住む家の周りだけを見ても
風の吹き方も、雨の降り方も子供の頃と違って
常に台風が来ているように荒れ狂うことが多い。
球磨川の近くに住む女性が家族を二人も亡くした直後に
インタビューに応えようとして泣いてしまい
「すみません」
と言っている映像を見て、自分も泣いてしまった。
「すみません」なんて言わなくていいのに、
とその人に言いたかった。
辛いことである。
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また今日も叫び声が聞こえる。
06/Jul.2020 [Mon] 14:06
工場の裏にある林の中から
奇妙な声が聞こえた。
ギグエエーッ、という低いけれど
そこに高音も混じる、そしてものすごく
よく通る声だ。
悪魔の声はこんな声だろうか?
と聞くたびに思ってしまう。
これはキョンの声で、一度鳴き始めると
しばらくその場に居座って鳴いている。
臆病なくせに「うるさい」と大声で言っても逃げない。
自分の声で他の音が聞こえないのかもしれない。
この何年かはキョンが大島全体で増えすぎているので
町が駆除をし始めた。
裏山に歩きに行くと防護ネットに
そのキョンが掛かっていることがある。
小さな華奢な体つきで、かよわい鹿に見える。
網に掛かっているとかわいそうで見るに耐えない。
(助けることは禁じられている)
しかし、その体つきとは裏腹に
声はすごいんですよね。
原稿を書いているときや、焼酎の帳面を付けている時に
こいつの声が聞こえてくると
仕事が出来なくなるくらい、ひどい声だ。
この何日かは毎日のように鳴いていて
ため息が出てしまうほどである。
まあキョンにしてみれば、鳴きたい事情もあるのだろう。
俺の言い分も聞いてくれよ、ということかもしれない。
これが東京なら、隣の部屋がうるさくてかなわない。
上の部屋の人の歩く音がうるさい、ということになるのだろう。
悪魔の声がいいか、隣人の人間の出す騒音がいいか、
まあどこにいても似たような悩みは尽きないというわけである。
とにかくそんなわけでキョンは今日も鳴いている。
百合の花に蕾がついているのは食べないでくれよ、と心の中で思った。
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ツバメは一日に一つずつ卵を産む。
15/Jun.2020 [Mon] 14:01
近所のヨシアキさんは自宅の倉庫に
毎年ツバメが巣を作るのを楽しみにしている。
今年はオスが一羽で来て巣を作ったものの
その後肝心のメスが来ないのでヤキモキしていたのだそうだ。
「家があっても、独身じゃあ寂しいよね」
と二人で話した。
その後オスのツバメには無事にお嫁さんが来て
とうとう巣には卵が四つ産みつけられた。
「卵は毎日一つずつ産みますね」
とヨシアキさんは教えてくれた。
巣の中を観察する専用の鏡を自分で作って見ているらしい。
それで、もう明日には卵が孵るという時になって
ツバメの片割れが巣の下で死んでいるのを
見つけたのだそうだ。
卵も四つとも無くなっていて
たぶん青大将という蛇の仕業だろう、と
いうことだった。
青大将は垂直の壁でも登ってゆくので
ツバメの巣も狙われてしまうのである。
「がっかりしましたよ」
とヨシアキさんは目にうっすら涙を浮かべながら話してくれた。
死んでいたのはたぶんオスのツバメだろうということ。
やってきた青大将を追い払おうとして
逆に噛まれたのだろう。
せっかく巣を直して、相手を見つけて
卵が孵る、というところまで行ったのに
自然界ではこういうこともよく起きる。
本当に残念だったね、とがっかりしているヨシアキさんに
そう声をかけた。
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