日本で唯一の屋根に椿の木を植えた店舗から作家、社長、杜氏である谷口英久が綴る抱腹絶倒の「Blog」
神様のおつかい。
21/Sep.2021 [Tue] 14:26
山に散歩に行くと道の真ん中にカラス蛇の子供がいた。
こんなところにいると車に轢かれるので道路脇に行くように促すけれど、カラス蛇としてはそれは嫌らしい。
葉っぱで尻尾のあたりを押してやるとトグロを巻いて戦闘態勢のポーズをとった。
おお、やるのかお前。小さいけどやる気十分なんだね。
それで葉っぱを蛇の上に落とすと、カラス蛇はそれをパクッと噛んだ。口の中のピンク色の舌が一瞬見えた。
すごいなぁ、子どもでも野性味は充分だ。
カラス蛇の子どもはそれからようやく動き出して道の脇の土手を登っていった。
それが昨日の話で今日は蔵の脇のポンプの下に蛇がいると妻が言う。ポンプの下にはブロックが敷いてあって、その穴の中に蛇の尻尾が見えた。
マムシだと危ないので行ったり来たりしながら見ていると青大将がその穴から頭を出して様子を伺っている。
その顔がなんとも可愛らしくてつい見とれてしまった。
蔵にいる蛇は神さまの化身なので大切にするようにと昔から言われているけれど、そうなのか神様はこんなに可愛らしいんだ。しばらくその頭だけ出している青大将を眺めていたけれど、妻が来たら、また頭を引っ込めてしまった。
でも逃げないのでここが気に入っているんだろう。
近ごろは何を見ても愛おしく感じて、スズメもツバメも、蛇もみんな愛おしい。見て、嫌だという気持ちにならない。
家には大きなアシタカグモがいるけれど、これも大切な愛おしい存在に思える。どうしたのかな俺? どこかおかしいのかな? とも思うけど、とにかくそんな気持ちだ。
こんな気持ちをどう表せば読み手ち伝わるのかわからないけれど、本当にそんな気持ちだ。
青大将はそのうちにどこかに行ってしまったらしく、ブロックの穴を覗いてみたけど、姿は見えなかった。
(七月に書いたものですが、今頃の掲載になってしまいました)
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今一番行きたい場所。
19/Sep.2021 [Sun] 11:49
渡合温泉に電話をしてみた。
毎年この季節になると岐阜の山奥のこの温泉に浸かるのが楽しみなのだけれど、この何年か、用事が入って行けなかった。
一昨年は台風の被害で家が大変なことになり、昨年はコロナ騒ぎ。
今年も同じくデルタ株が流行りだして、出かけるのを控えている。
渡合温泉のフェイスブックを見ると、最近テレビの取材を受けたそうで、取材にきた芸人さんと共にご主人と女将さんが玄関の前で写真に収まっていた。
ご主人のお腹が少し凹んで見えたので、電話をしてみる気になった。
電話をして懐かしい声を聞きたいと毎日のように思っているけど、気がつくと向こうの忙しい時間でになっていて、つい気後れしてしまう。
お昼頃がちょうどひと段落の時間だと思うけれど、その頃はこっちがバタバタしていることが多いからだ。
それで昨日、ようやくその夢が叶って、電話を掛けた。
女将さんの元気の良い声が聞こえてきて嬉しくなった。
「声が聞けて嬉しいうれしい」と女将さんも言ってくれて、こっちも胸がいっぱいになった。
三分も話していないけど、もう声を聞いただけで気持ちが温かくなった。
今年も行けそうにないんですよ、と言うと、「この季節になるとタニグチさんのことを思い出すから、どうしているかな? と思っていたんよ〜」と温かみのある声で言ってくれた。
電話を切ってからも、ずっと渡合のことを考えて、寂しかった。
大好きな友だちが遊びに来て、何日も遊んだあとで船に乗って帰ってしまったような気持ちだ。
子どもの頃によくそんな寂しい気持ちになったことを思い出した。
今週末にでも出かけてみようか? とも思ったけれど、やはり今は控えた方が良いだろう。
バスを降りてから何時間も歩く山の中のことや、青みがかった山を眺めながら浸かるお湯の気持ち良さや、蕎麦を打って一緒に食べたことや、そんなことを妻と話した。
静謐な時間が流れる宿は日本中を探してもこの渡合温泉だけだろう。
電気の通っていない、ランプだけの光の中で過ごすあのなんとも言えない暖かみのある空間を懐かしく思い出している。
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火を見ると目の色が変わる。
09/Sep.2021 [Thu] 13:48
0さんという友だちがいて、中国出身の女性だ。
明るくていつも元気なので、ぼくたち夫婦はこの人の大ファンである。
さらに頭もよくて、日本語を話すだけではなく英語も出来る。
建築の勉強を続けて、今では関西の大学の教授にもなった。
凄いことですね。
日本に来てまず日本語を学び、さらにその国の大学の教授にまでなるのだ。
しかも明るくて、一緒にいると笑いが絶えない。
そんな0さんのことを急に思い出して電話をしたら、あれ? 電話が繋がらない。旦那さんの携帯に掛けても「現在、この電話番号は使われておりません」ということ。
どうしちゃったのかなぁ? と思って、葉書を書いて送った。
年賀状は貰っているのでその住所に葉書を送ってみた。
するとようやく電話が掛かってきて、また楽しく話が出来たというわけだ。

中国のご両親の話から、(昔、遊びに行ったことがあって、本当に良くして貰った)0さんが教授になってどうしているか、など、話は多岐に渡って一時間も話してしまった。
その中で0さんの生徒が設計した建物がコンベで優勝した話も出てきた。
詳しくは書けないけれど、火をテーマに建物の設計をしたのだそうだ。
火については面白い話があって、その話をすると王さんは喜んでくれた。
どういう話かというと、ぼくの家に遊びにくる人が囲炉裏の前に坐って炭の火を見ると、そこから離れなくなる人が多い、という話だ。
何か問題を抱えている人ほど火をいじりたがる。火箸を使って炭の火をいじって、一日中そこにジッとしている。
そうやっているうちに心が晴れるのか、スッキリした顔になってゆく。
そんな話をした。
火が人の心と密接に関わっていることは間違いないのだろう。
なにしろ人は家の中で火を起こしてそれを見つめながらずっと暮らしてきたのである。
この百年で近代化が進んだけれど、それまでは火を囲んで身を寄せ合って暮らしてきた。
不安な気持ちも、火を見ると落ち着くのは、そういう意味もある。
ヨーロッパには家の中に暖炉があるけれど、日本で囲炉裏が残っている家は少なくなった。
火は危ない反面、生活の中に取り入れれば、心を豊かにしてくれる力を持っている。
そんなことを0さんと話して、楽しかった。
コロナが落ち着いたらまたすぐに会おうね、と話した。
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キュウリの佃煮を貰った
25/Aug.2021 [Wed] 8:09
よっちゃんと久しぶりに会った。
暑くなってきてからしばらく顔を合わさなかったので、どうしたのかな? と思っていたら暑いから畑に来る時間をずらして日が陰ってから来るようになったのだそうだ。
「これ、喰わないか?」
と言って、小さな包みをくれた。
車の中にクーラーボックスがあって、その中で冷やしてあったらしい。
「キウリの佃煮」
と言ってその包みをくれた。
パックをビニールで包んで、リボンで縛ってある。
これはよっちゃんではなくて、奥さんがラッピングをしたのだろう。
このあいだ、よっちゃんに名前を聞いてみたのだ。
少し勇気が入ったけど思い切って名前を聞いてみた。
「ひとふさんに聞いたらよっちゃんだって言われたけど?」
と聞いてみると
「おうよ。よしひろっていう名前だよ」
と言って電話番号も教えてくれた。それからしばらく顔を合わさなかったので、電話をしてみれば良いのだけれど、だからといって用があるわけでもない。
そんなところに、よっちゃんから思いもかけずキウリの佃煮をもらって、嬉しくなった。
会うことを予測してクーラーボックスの中にそれを忍ばせている、というところもなかなか。
翌日の朝、そのキウリの佃煮を食べてみた。
甘酸っぱい味にキウリのシャクシャクした食感が美味しくて、ご飯が進んだ。
嬉しいなぁ。
思いがけず良い友だちが出来て、小学校の頃の友だちのような柔らかな感触だ。
遊ぶ約束をしなくともいつのまにか一緒にいて、大して話さないのにお互いの気持ちがわかる。
そんな友だちが出来て本当に嬉しい。
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大工さんが来てくれた。
01/Aug.2021 [Sun] 9:19
前から頼んであった大工さんがようやく修理に来てくれた。
二年前の台風で家の屋根を剥がされて家中水浸しになってしまった屋根の修理と壊れたままになっていた玄関を直してくれることになった。
大島にいる大工さんは数が限られているので頼んだ順番待ちで今ごろになったというわけである。
だいたいのところは阪本さんや大嶋さんに手伝ってもらいながら自力で直した。
しかし玄関などの細かい細工が必要なところは素人では無理で、大工さんに頼んだというわけである。
大工さんの仕事は美しい。
戸締りもぴたっとしてすきま風も入ってこない。
雨も吹き込まないし、玄関の上がり框が葉っぱだらけになることもない。
ありがたいことである。
この二年間は修理に追われて、屋根の板金を叩いていたら耳はおかしくなるわ、めまいはしてくるわ、目は白内障になるわ、過酷な仕事だったんだなあと、痛感した。こういうことはプロに頼むのか良いのだ。
しかし雨漏りが続いて、なんとかしなきゃ、と必死だったのも事実である。
とにかく、これで一安心。
今年ももうすでに台風が来ていて、どんなことになるやら、心配は尽きないけれど、とにかく今日も元気に暮らしている。
ありがたいことである。
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「猫ピッチャー」を早くイタリアに輸出してください。
07/Jul.2021 [Wed] 9:33
イタリアの友人、パオラとジョバンニからメールが来た。
二人ともコロナのワクチンを打ったのでもう旅行に出かけるという。
ポルトガルのリスボンまで行くのだということ。
ありゃー、もう旅に出るのか。
イタリアは今までコロナの規制が厳しく、家から一歩も出られない日が長く続いた。
その間に何度も「猫ピッチャー」を翻訳して送ってあげようと思ったのだ。
猫ピッチャーは文字通り猫のミー太郎がピッチャーとしてニャイアンツで活躍するマンガで、これがなんとも可愛い。
ジョバンニとパオラはタバタという猫を飼っていて、東京に来た時は「田端」に行きたいと言っていた。飼い猫と同じ名前なので、その駅に行ってみたかったらしい。
猫も大好きなので、このマンガを読んだら大喜びするだろうと思ったのだ。
そうか、間に合わなかったか。
でも猫ピッチャーは続々と新刊が出るし、ひとつ読んだら、また次も読みたくなる。一度送れば「もっと読みたい」と言うだろうしそれを翻訳していたら大変なことになる。
それに日本の微妙なニュアンスの面白さをどうやって訳すのか、それも考えると頭が一杯になってくる。
井筒監督の味わい深さや、ニャーという擬音、相棒の平野捕手と共に次々と編み出される魔球、(ニャツクルボールなんて難しすぎる)飼い主のユキちゃんのひょうひょうとした可愛らしさなど、どれも翻訳ひとつで味わいが変わることだろう。
ま、今度会う時に一冊持っていって、その都度話したらいいか、と、思った。
二年前だったかミラノでバルに入ってエスプレッソを飲んでいたら店員の女の子に「ワンパンチって最高だよね」と言われてポカンとしてしまった。どうもそういうマンガがあって彼女はそれを読んでいたらしい。
「知らない」と言うと「知らないの?」と逆にびっくりされてしまった。

そうしているうちにジョバンニたち二人はリスボンに着いて、楽しんでいる様子の写真がメールで次々と送られてきた。
楽しんでね、とそのたびに返信をしている。
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イヨマンテの夜
10/May.2021 [Mon] 8:06
おじさんのところに顔を出したら「この間のど自慢を見てたら凄い少年が出てきたんだよ」と言ってその時に撮ったビデオを見せてくれた。
何を言っているのかわからなかったけれどそのビデオを観て驚いた。少年はまだ中学生になったばかりなのかぶかぶかの学生服を着ている。声が小鳥のように高くて可愛らしい。
その子がマイクを握ると急に低い太い声になって「イヨマンテ〜」と歌い出したのでびっくりした。
ものすごい声量で歌を歌い出した。
後ろで聞いている氷川きよしの顔が呆気に取られて口が開いてしまっている。
凄いなぁと思っているうちに鐘が鳴り合格となった。
アナウンサーからのインタビューで少年はこの歌をおじいちゃんから習った、将来は歌手になりたいのだと言った。
「おじいちゃんに一言なにか?」と、言われて
「おじいちゃんやったよ」と言う仕草が可愛らしい。
親戚のおじさんはこれを見て涙ぐんでいる。
歳を取って涙もろくなったんだろう。でもそのくらい人を揺さぶる力のある子だった。
北島三郎もこののど自慢で優勝したことがきっかけで歌手になったのだそうだ。
凄いなぁ、こういう子がいるんだ
なぁと思いながらおじさんとビールを飲んだ。
「イヨマンテ〜」とその少年の真似をするとおじさんは手を叩いて喜んていた。
うーんびっくりした。
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キクラゲの採れる山
07/Apr.2021 [Wed] 14:18
山を歩いている時に枯れ木に何か生えているので、あれ? と思った。
ビロードのような産毛が光を浴びてそれが眼に飛び込んできた。前日は久しぶりに雨が降ったせいか、その光るものは夕陽の中で輝いていた。
「あれ、キクラゲじゃないかな?」
と妻に言うと妻は立ち止まってそれをじっくり見つめて
「そうだ、キクラゲだ、よくわかったね」
と言いながら背伸びをしてそのキクラゲを採った。
冬は乾燥して縮んでいたものが雨が降ってぶりぶりしている。
それを片手に余るくらい取って帰った。
アーサイというシャリシャリ感の強い野菜があったのでそれと一緒に炒めてみると、美味い。
まさしくキクラゲで、いや、びっくりした。
こんなものが生えているなんて、素晴らしい山じゃないか、と妻と喜んだ。
よっちゃんは蜜柑やふきのとうをくれるし、歩いていれば食べるものも見つかるし、なんと素晴らしいことか、と思った。
また日本むかし話のようになってしまった。
でも本当にこの半年は、ムカゴから始まって山の恵みをずいぶん貰った。
ムカゴご飯も美味しかったし、よっちゃんとも知り合いになれたし、さらにキクラゲまでいただいて、ありがたいことだと思った。
本当にありがたいことだと思った。
山の神様これからもどうぞよろしくお願いします、と山に向かって手を合わせた。
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知らないうちに季節が巡る。
29/Mar.2021 [Mon] 14:17
阪本さんのところに鍼の治療に出かけた帰りに庭に出ると木の枝に蕾がたくさん付いているのが見えた。
蕾にはベルベットのような小さな細かい毛が生えていて、指先でそっとなぞると気持ちが良さそうだった。
その横にはもう桜の花が咲いていて、
「いつの間に?」
と思った。
今日はまたひどく冷え込んで風も吹き荒れているけれど
そんな中でも春が近づいているんだ。
木のつぼみも本当に可愛らしくて、嬉しくなった。
ゆっくりと土の道を踏みしめて、車まで戻った。
鍼の治療ももう二十年近くしている。
その間に何度もここを歩いているはずなのに
小さな発見が無数にあって驚かされる。
こんなつぼみがあったことも今日初めて知ったのである。
ぼくの知らないことはまだ世の中にたくさんあって
きっと知らないまま、一日を過ごしているんだろう。
その間にも木の芽がふくらんで、春が近づいてきているんだ。
なんてすごいことなんだろう。
生きている自体がすごいことなのに、こうして地球は回って春がまたやってきている。
なんてすごいことだろう、と馬鹿みたいに何度も思いながら工場まで戻った。
(三月初めに書きましたが掲載が遅くなりました)
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鳥たちの囀り。
22/Feb.2021 [Mon] 14:16
裏山に歩きに出かけるとウグイスが鳴いていることに気がついた。
今までは「ぺちょ」っという風に鳴いていたのに春の温かさを感じたのか
「ホーホケキョ」
という風に鳴き出した。
それがあちこちで聞こえるので嬉しくなった。
一緒に歩いている妻は鳥が鳴くと
「あれは何の鳥?」
とぼくに聞く。
ぼくが知っている鳥の声はウグイス、ヒヨドリ、メジロ、ホトトギスの四種類だけだ。
このうちウグイスとメジロは冬に鳴く声と春になってからの鳴き声が変わることも何となく知った。
でもそれも本当かどうか、調べたわけでもないので自分だけの思い込みかもしれない。
今日はまた違った声の鳥の鳴き声が聞こえた。
「ヤマケイのアプリを買おうかな? でも高いんだよ」
と妻が言った。
そのアプリは山と渓谷社の出しているもので
鳥の画像と鳴き声も入っているのだそうだ。
昔ぼくの母親が持っていた鳥類図鑑というものに
カセットテープも付いていて、それで鳥の声も聞くことができたけれどもうどこに行ったのか、わからなくなってしまった。
母も鳥が好きで、鳥の声を聞くとどんな鳥なのか知りたかったのだと思った。
もともとラジオのアナウンサーをしていたので音に興味があったのかもしれない。
山の中で目を瞑り耳を澄ますと色々な音や声が聞こえてきて嬉しくなる。
春がもうそこまできていて、それが鳥の囀りでも手に取るようにわかる。
春だ春だ、と心の中で思った。
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