日本で唯一の屋根に椿の木を植えた店舗から作家、社長、杜氏である谷口英久が綴る抱腹絶倒の「Blog」
どんな朝が来るか? 
07/Sep.2016 [Wed] 18:47
アボガドとトマトのサラダが余ったので
翌朝の味噌汁にどうか? と考えた。
どうか? も何も、夜に食べる野菜がそのまま
翌日の味噌汁の具になるのである。
トマトはよく味噌汁の具になるので
どんな味になるか、予想がつく。
しかし、アボガドはどうかなあ? と思った。
予想通り、まるで美味しくなかった。
そこで、アサリを投入した。
出汁を効かせればなんとかなるのではないか?
と寝ぼけた頭で思ったからだった。
アサリは真空パックになっているので
封を切って入れればいい。
とにかく、この具でなんとか食べられるものに
しなければいけない。
作り直している時間はないのである。
父も待っているし、我々もご飯を食べて
仕事に行かなければならない。
アサリを入れたら、なんとなく、食べられるような
味になった。
急いでそれをプラスチックの容器に入れて
父のところに持っていった。
父はそれを一口食べて、目が泳ぐような顔になった。
なんの味なのか、わからないようだった。
「こりゃ、なんだろう?」
と言って熱で黒ずんだアボガドを箸でつまんだ。
「アサリだよ」
とぼくは言った。
「アサリ? これが?」
父はそう言って、アボガドを口に入れた。
「そうだよ。美味しいでしょう?」
ぼくは言った。
「そうかなあ?」
と父は言った。首を傾げている。
「ほら、もう一回食べてみてよ?」
父は味噌汁を啜った。
「うん、アサリの味がする」
「そうでしょ? アサリだもん。ね?」
ぼくが言うと、父は
「うん、うまい」
と言った。
やれやれ。
次は妻だ。
妻は昨日、このサラダを作ったわけで、言ってみれば
味噌汁で何が起きているのか、わかっているはずだった。
「アボガドの味はちょっとヘンだけど、
アサリの味もするから」
とぼくは言った。
妻はふーん、という顔をして、味噌汁を飲んだ。
それから
「うん、美味しいじゃん」
と言って口の端に含みを持たせた顔で、笑った。
こういう朝もあるよな、と二人でぼそぼそ呟くように言った。
しばらく何も話さないまま、二人で味噌汁を音をたてないですすった。
「あ、雀が来た」
と妻が言った。
窓の外に雀が何羽も来て、ご飯をついばんでいるのが見えた。
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消えなかった。
13/Jul.2010 [Tue] 7:26
東京から戻ってきた妻が「天むす」を買ってきてくれた。
「天むす」は名古屋名物のおにぎりのことである。
小さなおにぎりに、海老の天ぷらが載っている。
昔は名古屋に行かないと買えなかったけれど、今では東京でも買うことができる。
「天むす、買ってきたよ」
と妻に言われて、妻のかばんの中を探してみた。
ふだんは何も探せないのに、こういうものはすぐに見つける。犬になったような気分である。
冷蔵庫に入れてあったらしく触ると固い。そこで電子レンジで温めてみた。
今度は熱すぎる。
どうしてこう、丁度良い加減にならないのかなあ? と一人で思う。
「温め、弱」にしても、ぼくには熱い。「弱の弱」という機能を付けたらどうか? と思う。
俺が社長ならそうする、と妻に言うと
「あんた、社長じゃないから」
と言われた。
食べるとカレーの味が、したように思った。
勘違いだろ? と思いながらいろいろなことを考えた。
電子レンジで前にカレーを温めたので、おにぎりにカレーの味が付いたんじゃないか? と思った。
しかしカレーなんて食べていない。
変だな? と思っておにぎりの包まれていた袋を見ると「カレー味」と表示されている。
犬が来て、
「それなーに?」
と訊かれた。
「カレー味の天むす」
と言った。
「ちょーだい」
と言うので、人差し指くらいの大きさだけあげた。
「もっと、ちょうだい」
と言うので、
「いやだ」
と言った。
カレー味と天むすが頭の中でうまく合わないので目をつむって、カレーの味が消えるように、と思うようにしてみた。
消えなかった。
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噴火する寸前の火山と妻。 
14/Aug.2007 [Tue] 7:01
妻の首に汗疹(あせも)が出来てしまった。
工場にも店にも冷房がないので
汗をかいて仕事をする。
机に向かって仕事をしていても
汗が喉のまわりから滴る。
見せてもらうと喉仏の下のあたりが赤くなっている。
ぽつんぽつんと小さな湿疹が盛り上がって
噴火する寸前の火山のように見える。
そこで、工場のまわりに生えているドクダミの
葉を掘ってきた。
これを煎じてみたら、きっと効くんじゃないか?
と思ったのである。
仕事をするのは億劫だけれど
こういうことをするのは、なんだか楽しい。
煎じる、といっても、硝子の容器に葉っぱと根っこを
入れて、煮るだけである。
火にかければそれで終わりだけれど
いつまでも、その火を見ていた。
汗が身体を伝って流れ落ちてゆく。
ドクダミの匂いが、台所に溢れてゆく。
強烈だけれど、嫌な匂いではない。
十分くらい火にかけたあとで
(なんだか美味しそうだなあ)
と思った。
汗疹にはそのお茶を塗れば良いけれど
きっと飲んでみたって良いに違いない。
うーん、旨い。
こりゃいける。
さて、仕事だ。
忙しいぞ。
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毒キノコの甘い誘惑
06/Aug.2007 [Mon] 19:34
東京のアパートに戻ってくると
ベランダに置いてあるオリーブの樹の脇に
白いキノコがいくつも生えていた。
マッシュルームによく似た形をしている。
土から取ると、自家製酵母を使った
焼きたてのパンのような良い香りがした。
腹が減っていたので、食べてみたい衝動に駆られた。
「食べてみようか?」
と妻に訊くと、
「指の先が溶けるかもしれないよ」
と言った。
毒キノコは怖いものがたくさんある、という。
「毒のあるものほど、いい匂いがするもんだよ」
と妻は疑わしい眼つきをして言った。
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