日本で唯一の屋根に椿の木を植えた店舗から作家、社長、杜氏である谷口英久が綴る抱腹絶倒の「Blog」
もうそういう歳になったんだなあ、と友達が言った。
21/Jan.2017 [Sat] 17:39
仕事をしていると、S藤のお母さんがやってきた。
うちにS藤のお母さんが来たのは
初めてのことだったので、どうしたんだろう? と思った。
お母さんはぼくの顔を見るなり涙ぐんで
眼から涙が溢れてくるのが見えたので、驚いた。
驚いたのと同時に何か悪いことがあったんだな、
と思った。
でも、そんなことは考えたくないな、とも思った。
「ヒロユキがねえ、死んじゃったのよ」
とお母さんは言った。
S藤とは中学一年生のときに同じクラスになった。
気があって、一緒によく遊んだ。
S藤の家にもよく遊びに行ったので
お母さんにもお世話になった。
大学生になって、東京に出てからも、神楽坂から
S藤の住んでいる中野のアパートまでよくバイクで
出かけた。
最後に会ったのは三年前で、お正月休みに大島に戻ってきたので
と言って、焼酎工場に寄ってくれた。
娘さんが一緒で、その子が中学時代のS藤に本当によく似ていて
嬉しくなった。
二年前に寄ってくれたときは、ぼくが出かけていて
会うことが出来なかった。
そのことをときどき思い出して、
「そうだ。連絡をしなくちゃなあ」
と思っていたのである。
昨年の秋に胆管が詰まったことで手術をしたのだそうだ。
すると肝臓に癌が見つかった。
その癌がずいぶん進んでいたのだそうだ。
胆管を手術したあとで、仕事場である大学にすぐに
復帰をしたらしい。
けれども、また具合が悪くなってクリスマスの日に
亡くなったのだそうだ。
お母さんの話しを聞いて、ぼくも涙がとまらなくなった。
お葬式は現役の大学教授だったこともあり
住んでいた街で執り行われたのだという。
「今日、大島のお墓に納骨をしてきたの。
そうしたらあんたの顔が眼に浮かんだから
ここに来てみたのよ」
とお母さんは言った。
少し前に、S藤が高校生のときに録音してくれた
ビートルズのカセットテープを久しぶりに聴いたのだった。
シングルの発表順になっていて、それを調べて
録音してくれたものである。
誕生日プレゼントにS藤がくれたもので
それが今でもちゃんと聴けることが素晴らしいなあ、
と思ったばかりだった。
夕方になって、家に帰るまえに、S藤のお墓参りに出かけた。
村が違うので、場所がよく判らなくて、しばらく探した。
お墓の前にマグカップが置いてあって、それをしばらく眺めた。
冷たい風が足元から吹きつけていた。
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