日本で唯一の屋根に椿の木を植えた店舗から作家、社長、杜氏である谷口英久が綴る抱腹絶倒の「Blog」
そこにいるの?
31/Jan.2018 [Wed] 7:27
近所の民宿をやっている女性から電話があった。
電話に出たのは妻である。
「あのさ、お父さんが住んでいた家、あれ貸したり売ったりしないの?」
と訊かれたのだそうだ。
「いえ、まだ亡くなったばかりですし、それにまだお骨も置いてありますから」
と妻は応えた。
「うん、知ってる。親戚の人に聞いたら、見てもいいって言うから
今見てきた。お客さんを連れて」
その人はそう言ったという。
四十九日までは祭壇にお骨を置いて、近所の人でお線香をあげたい人がいれば
昼間のうちに勝手に家に入って手を合わせてもらえるようにしてある。
そこにお客さんを連れて、家の中を見てきたのだそうだ。
「お客さんはイギリス人で、ここに住みたくて、家を探しているのよ。
だから連れて行って家の中も見させてもらったけど、売る気があるかどうか、
旦那さんに聞いてくれない?」
そう言われて答えに窮して、仕事をしているぼくのところまで妻が電話を持って訊きに来た、というわけだった。
(だってお骨が置いてあるんだよ。そう言ったの?)
ぼくは電話の子機を手のひらで押さえている妻にそう言った。
「うん、何度も言ったけど・・・・」
妻も困ってしまったように少しうなだれるようにしてそう言った。
目の下に隈が出来たように青白い顔をしている。
お骨が置いてある棚には花も飾られて、父の遺影、それにいつも被っていたお気に入りの帽子も置かれている。
イギリス人の夫婦はそれをどういう気持ちで見たのか、それよりも家を欲しい気持ちが優先したのか、それはもう理解のしようがなかった。
「売る気も貸す気もないって言ってよ」
ぼくは電話に出ずに妻にそう言った。
妻がそう電話に向かって言うと
「じゃあもし気が変わって、売る気になったら連絡をちょうだいよ」
そう言ってその民宿の女性は電話を切ったという。
しばらくそのことを考えていたけれど
造っている焼酎が不味くなるので、考えるのをやめた。
(見に入ったのか・・・)
そう思うと可笑しくなってきて、ちょっと笑った。
死んだら何も言えないけれど、生きていても何も言えないことって
あるよなあ、と父に話しかけた。
焼酎蔵の中に四つぶら下がっている電球のひとつが消えた。
電球の球が切れたのかと思って取り替えようとしたら
また点いた。
不思議なことがあるもんだ、と思った。
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コメント
不謹慎が一周してもう可笑しいですね。あちらとしては彼の国日本のさらに理想の小島で千載一遇の運命!的な、お骨まで迎えてくれて行くしかないみたいな、また違うストーリーの中にいらっしゃるのでしょうか。
いろんな物語があるもんだなとしみじみ思います。その後はいかがでしょうか。。
さと : URL : 07/Feb.2018 [Wed] 10:34 : qA2F5Zqc : PAGE UP↑↑↑
さとさんこんにちは。
本当に見る立場によって、見えてくるものはまるで違うものになりますし、見たいものしか見ていない、ともいえますね。
だから逆の立場にも立ってみて楽しんだ者の勝ちかもしれません。
色々なことがありますがぼちぼちやっています。
いつもありがとうございます。
一円大王 : URL : 07/Feb.2018 [Wed] 12:55 : zosSAIdI : PAGE UP↑↑↑
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