日本で唯一の屋根に椿の木を植えた店舗から作家、社長、杜氏である谷口英久が綴る抱腹絶倒の「Blog」
人の家の匂い。
14/Jul.2022 [Thu] 15:26
トキワ荘ミュージアムを訪れて何かが足りない、と思っていたけれど、ようやくそれがわかった。
匂いがしないのだ。
そこに住んでいる人の生活の匂いがしないので、見ていても深い満足感が得られない。
たとえば人の家を訪ねると、その家独特の匂いがある。
匂いはすぐ慣れるので感じるのは一瞬だけれど、嗅いだことのない空気を感じると、「どんな家なんだろう?」とワクワクする。
つまり家が活きているからこそ、匂いが生まれる。
ミュージアムなのだからやはりこのワクワク感が大切なのだ。
今、ちょっと前まで人が住んでいたような気配が出せたら、この手のミュージアムとしてはよく出来ている、見せ方が上手いのだ、と思う。(なんだか偉そうな言い方になってすみません)
トキワ荘ミュージアムの展示では部屋の中に食べた後のラーメンのどんぶりに汁が残っていたりして、本物感を出そうとしている。
しかしそれは精巧に作られた飾りで、本物の匂いがしないのだ。
つまり見ていてもワクワクしない。
今までそこにいた人の気配。
それが感じられたら見に来た客は本当に面白く感じるのに、と思った。
どうしてそんなことを言うのか? というとアメリカのシアトルでそういうミュージアムを見たからだ。
シアトルにはかつて日本人をはじめアジアからたくさん人が来て一つの街を作っていた。
その一画に中国から来た人々を受け入れる宿があり、今はミュージアムとして人に見せている。
その部屋に入ると、今まで人がいたような気配がしてドキッとする。どうしたらそんなふうな見せ方が出来るのか、不思議だった。
使っていたものがそのまま置いてあるからだろうか?
とにかく部屋の中に人の温もりがあって、誰かの部屋に忍び込んだような感覚に陥る。
それがトキワ荘にはないのである。
しかしこれは簡単そうに見えて実は相当計算された見せ方なのかもしれない。
やってみろと言われても出来ないからだ。
ひとつヒントがあるとすれば、人は見せたくない裏側ほど見たがる、ということだ。
うちに来るお客さんでも、店舗ではないバックヤードや乱雑な作業場ほど、面白がって見る人が多い。見ている目が活き活きとして、輝いている。
CDの棚を熱心に覗いてピンクレディやキャンディーズのアルバムを見つけては大喜びをしている。
たぶんそこに人の息遣いと、意外性を感じるからではないか、と思う。
見られる側としては恥ずかしいものほど、見たいものなのかもしれない。
そのちょっとしたことに、ミュージアムの秘密があるように思った。
日本にも良いミュージアムは沢山あって、東京なら昭和の暮らし博物館は見せ方が上手い。
住んでいた人の気配がする。
小金井の江戸東京たてもの園では仕事もさせて貰った。
だからこそ展示の難しさはよくわかる。
トキワ荘ミュージアムもこの匂いが醸せたらどんなに良いか、と、思った。
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