日本で唯一の屋根に椿の木を植えた店舗から作家、社長、杜氏である谷口英久が綴る抱腹絶倒の「Blog」
なかなか経験できるもんじゃない。
27/Apr.2017 [Thu] 17:30
何年かに一度、酒税の調査がある。
原料になる麦を年間で何トンか仕入れる。
すると、そこから換算して、何リットルの焼酎が出来るか、
ということが判る。
それを蒸留して、今、タンクに何リットルあるのか?
それを割り水して、瓶に詰めて、瓶が何本あるのか?
今日は何本売れたので、残りは何本か?
これをすべて細かく記帳して、数が正確に合わなければならない。
そんなことが出来るのかって?
やっているのが酒造会社なんですよ。
うちもきちんと記帳している。
しかし、人間のやることだから、ときどきは記帳ミスも出てくる。
すると数が合わなくなる。
おかしいなあ? ということで、どこにミスがあるのか、
調べるのだけれど、そう簡単には見つからない。
調査は国税局の酒税担当の調査官が四人来た。
四日間、朝から夕方まで、蔵に来て調べるのだけれど
やはり、緊張する。
そのストレスと言ったら尋常ではない。
昨日はこんなことがあった。
毎年、「一都三県蔵元の会」という会が秋に行われていて
これには必ず出品をする。
蔵から出た焼酎は課税義務が発生するので
この焼酎にも税金を払わなければいけない。
「あのさ、あれ、一都三県の会にも出してるの?」
とまず軽い口調で聞かれた。
「出さないと、組合にしつこく催促されますからね。
出していますよ」
そう答えた。
それを翌日になって、
「その一都三県の伝票はどこにあるのかな?」
と訊かれる。
もうね、ゾッとしますね。
きちんと記帳して、伝票を切ったつもりでも
贈呈したものは、漏れている可能性もあるからだ。
必死になって探すと、ちゃんと出てきた。
すると今度は、それをどういう形で送ったのかな? と訊かれる。
ヤマト運輸で送ったのなら、その伝票もあるよね?
というわけだ。
最初の二日間は、それに税務署の指導員も加わって
総勢六人での調査となった。
そんなわけで、今日、その調査が終わった。
タンクの容量も瓶の数も、ぴったり合っていて問題はなかったけれど
造った麹の重さを測れないか? と訊かれた。
うちでは一度に300キロの麹を造る。
もちろん一人だ。
それをタンクに入れるのも手作業となる。
それをどうやって測るのか?
逆にお尋ねしますけど、どうしたらいいでしょうね?
とぼくは訊いた。
なんだか禅問答のようにも思った。
仕方がないので、20キロまで計ることの出来る秤を
用意して、そこに一々載せて、計ってみることにしたら
どうかなあ? と提案してみた。
現場と机上の差、と言えばそれだけだけれど
やるほうは大変である。
酒造という仕事は本当に特殊だ。
これを誰かに話しても、誰にも理解はされないだろう。
ふーん、大変ですね、というのがたいていの人の答えだ。
まったくなあ、としか言いようがない。
この疲れもしばらくは取れないだろう。
本当にまったくなあ、だよなあ、と思いながら
今日も一人で焼酎を瓶に詰めた。
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ツバメがやってきた嬉しさ。
19/Apr.2017 [Wed] 17:21
風に乗って、鳥の声が聞こえてくる。
今はウグイスがさかんに鳴いている。
それからほととぎす。
メジロも澄んだ高い声で囀っている。
それに混じって、ツバメの声が聞こえたような気がした。
まだ肌寒いのに、もう渡って来たのかな?
と思って空を見上げた。
桜の花が咲く梢をかすめるように素早く飛んでゆくツバメの姿が見えた。
そうか、もう渡ってきたんだ。
今年は暖かくなるのがゆっくりで、桜も長く咲いた。
だから、渡ってくるのは、まだ先だろうと思っていた。
玄関の前には、蚊がたくさん湧いてきて
扉が開くのを待っているように見える。
もう蚊も出てきたんだ、と思ったのが一週間前のことだった。
虫が出てくれば、それを食べるツバメも渡ってくる。
自然の営みは、ぼくが知ろうと知るまいと、確実に進んでゆく。
ツバメはどうやってその時期を知るのか?
どうやって仲間を募って、群れになって飛び立つのか?
どうしてこの大島にやってくるのか?
ぼくは何も知らない。
ただ耳を澄ますと、鳥の声が聞こえてきて
ああ、ツバメがやってきたんだなあ、と
今日はそのことが嬉しかった。
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愉しみは自分で探そう。
17/Apr.2017 [Mon] 17:26
旅行会社の人から連絡があって
大人の社会見学、というツアーを企画しているけれど
そちらに伺ってお話を伺うというのは
どうでしょうか? と言われた。
お話しって、どんなことを喋ればいいのか、
ぼくはそれを聞いただけで、うろたえてしまった。
こんな小さな焼酎蔵で、一人でぼちぼち造っているだけの
人間の話を聞きたい人なんているのだろうか?
かつては、こういう話がくると律儀に引き受けていた。
山登りみたいな格好をしたお元気そうな初老の人たちが
バスからわらわら降りてきて、
じわじわと取り囲まれる。
では、タニグチさん、お願いします、と言われて
自分がしていることを話すのだ。
どうして一人で焼酎を造っているのか? 
というようなことを話すと
うんうん、とか、ふむふむ、とか言いながら肯く人もいる。
その奥からジーッとまばたきもせずに薄く笑っている人と
眼が合ってしまって、言葉が出なくなることがあった。
話したあとは、もう寝込みたいくらい、疲れてしまう。
仕事どころではなくなってしまうのである。
それで、近頃はもう滅多なことでは、こういうツアーのお話は
引き受けないことにしている。
なにしろ店も小さいし、十人も人が入ったら身動きが
取れないくらいだ。
「そうですか。残念です。もっと多くの人に
ツバキ城の良さを知って欲しいんですけどね」
とそのツアーを企画している人は言っていた。
観光名所になるのに、と思っているらしい。
いえいえ、もうツバキ城の屋根の草もボウボウで
人に見られるのも恥ずかしいくらいですから。
外壁のすき間の土も埋めなきゃいけないのは
わかっているけれど、毎日、仕事に追われている。
春になって、ウグイスやメジロの囀る声が聞こえてくる。
それを耳にすると本当に嬉しくなる。
疲れたらちょっと日向ぼっこをして、ぼんやりする。
そんなことをツアーのお客様に喋ったら面白いのかな?
と、思うけど、
考え出すと際限なく頭が動いて疲れるので、
とにかく自分の仕事に精を出す日々である。
味わいのある旨い焼酎を造る。
それだけである。
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