夜の十時過ぎになって麹に手を入れに工場まで行く。まあ、いつもの作業である。
しかし今日は眠くて、八時ごろいったん布団にはいって寝てしまった。
すると今度は起きるのに苦労する。ようやく起きて服に着替えてでかけようとすると
バカ犬テツも「おれも行くよーん」とばかりにヒイヒイ鳴き出す。
仕方なく連れて行くがこいつも眠いのは同じらしく
工場の中に据えてあるストーブの前でゆったりと横になりウトウトしている。
俺が仕事をしているっていうのになんでお前が寝ているのか?
と思って、テツを起こす。するといったんは起きてぼくのそばに座り麹を返す仕事を見ているが
しばらくするとやっぱりストーブの前に横になっていた。
「お前はもう連れてこないからな」と警告すると今度は外の闇にむかってワンワンと吠え出す。
しかし外には誰もいない。工場の前にはお墓があるだけなのだ。
まあ、お前には見えるのかもしれないけどさ、怖いじゃないかよ、おい。
俺には見えないんだし、黙っておけばいいのになあ・・。
まったく役に立つのか立たないのか、わかんない犬だなあ。